大人の歯ブラシ、どう選ぶ?

はじめに

「自分に合った歯ブラシを選べているのかな?ちゃんと歯磨きできているのかな?」このように考えることはありませんか?虫歯や歯周病、口臭、歯石、着色などのことを考えると、今の歯磨きで予防できているのか不安に感じますよね。

歯科医院の歯磨き指導を受けると、適切な歯ブラシなどのデンタルケアグッズを使い、正しいブラッシングができるようになるため、さまざまなお口の悩みを予防できます。

この記事では、自分に合った歯ブラシを選んで適切な歯磨きをしたいと考えている方向けに、「大人の歯ブラシの選び方と歯磨きのポイント」「ブラッシング指導の重要性とメリット」について詳しく解説しています。

自己流の選び方や歯磨き方法では、限界があります。是非ともこの記事を参考に、ブラッシング指導も検討してみてください。

虫歯の予防にかかせない習慣

大人の歯磨きの重要性

大人の口腔内は、さまざまな影響で虫歯や歯周病のリスクがあり、正しい歯磨きをしなければ、口腔疾患のリスクが高まります。はじめに正しいブラッシングが必要な理由と、できなかった時のリスクについて紹介します。

正しいブラッシングが必要な理由

口腔内には、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌のかたまりがあります。プラークは食後8時間(※1)ほどで形成され、歯の表面に付着します。プラークは2日間ほどで少しずつかたまり、約2週間(※2)で歯石になります。

プラークと歯石は、細菌の温床になるため、プラークを歯磨きで適切に除去しなければ、虫歯や歯周病、口臭、着色などのリスクが高まります。

※1参考:プラーク/歯垢(厚生労働省e-ヘルスネット)
※2参考:歯石(厚生労働省e-ヘルスネット)

大人における歯の問題とリスク

大人の口腔内は虫歯になりやすく、年齢とともに歯周病のリスクが高まります。過去に虫歯治療をした歯は再び虫歯になりやすく、歯周病によって歯ぐきが下がり、隠れていた歯の根っこ部分は表面がやわらかいため、虫歯になりやすいのです。

喫煙や飲酒を日常的にする場合などの生活習慣も口腔内へ大きな影響を及ぼします。しかし日常的な正しい歯磨きと定期的な歯科検診でこれらのリスクを防げます。

大人の歯ブラシの選び方

正しいブラッシングのためには、まず自分に合った歯ブラシの選択が必要です。自分に合っていない歯ブラシでは、十分に汚れを落とせません。

大人の歯ブラシには、さまざまな種類があります。口腔内の状況は人それぞれ異なるので、自分の状態に合った歯ブラシを選びましょう。歯ブラシを選ぶときのポイントは次の6つです。

  • 歯ブラシの毛の硬さ
  • ブラシのサイズ
  • ブラシの形状
  • 毛先のタイプ
  • 持ち手部分
  • ケアの用途を考える

順番に説明します。

1:歯ブラシの毛の硬さ

歯ブラシの毛の硬さは、かため・ふつう・やわらかめの3種類があります。

毛の硬さがかたいほど、プラークを除去できますが、圧によって歯や歯ぐきを傷つけてしまう可能性があります。歯ブラシを握る力が弱い人はしっかりプラークを除去する、かための歯ブラシがおすすめです。

ふつうタイプは、扱いやすく子どもから大人まで幅広く使えます。程よい硬さで効率よくプラークを除去します。歯や歯ぐきに大きな問題がない場合は、ふつうの歯ブラシを選ぶとよいでしょう。

やわらかめは、歯ぐきが下がっている人や腫れている人に適していますが、毛先がやわらかいので汚れを落とす効果が低くなります。

2:ブラシのサイズ

ブラシのサイズには、大きめと小さめがあります。
大きめサイズは、一度に磨ける面積が広いため、歯と歯ぐきを同時に磨けます。磨き残しやすいデメリットがありますが、細かなテクニックを使わなくても、少ないストロークで歯と歯ぐきの汚れを落とします。

ブ小さめサイズは、磨き残しやすい細かな部分や奥歯まで届きやすいことが特徴です。操作がしやすいメリットがありますが、一度に磨ける面積が少ないので時間をかけて歯を磨く必要があります。

3:ブラシの形状

ブラシの形状は、フラットなタイプと山形タイプがあります。
毛先が平になっているフラットタイプは、歯の表面にブラシがあたりやすく、力を均等に加えられるので、効率よく汚れを除去します。

歯ブラシを横から見たときにギザギザとしたように見える山形タイプは、歯と歯の間や歯並びが悪いところにピッタリフィットさせると汚れを落としますが、基本的には歯に当たる面が少ないので、汚れの除去率が下がります。
なるべくフラットタイプを選ぶとよいでしょう。

4:毛先のタイプ

ブラシの毛先にはラウンドカット毛とテーパード毛があります。
毛先が丸くなっているラウンドカット毛は、歯の表面の汚れを効率的に除去します。一般的な歯ブラシの多くは、ラウンドカット毛を使用しています。

毛先が先端に向けて細くなっているテーパード毛は、歯と歯の間の溝(歯周ポケット)に届きやすく刺激が少ないので、歯周病の人や対策を考えている人におすすめです。

5:持ち手部分

歯ブラシの持ち手部分には、太めタイプ、細めタイプ、まっすぐなタイプ、少しカーブしているタイプなどがあります。
太めタイプは握りやすいので、高齢者や握力が弱い人におすすめです。細めタイプは余計な力が入りにくくなるので、手に力が入ってしまう人や強く圧をかけて磨いてしまう人におすすめです。

6:ケアの用途を考える

虫歯や歯周病の問題を抱えているケースや、矯正装置をつけている、インプラントをしているなどの特別なケアが必要な場合、それに合わせた歯ブラシを選ぶ必要があります。この場合は、歯科医師や歯科衛生士からのアドバイスを仰ぐことが重要です。

正しいブラッシングのポイント

正しいブラッシングのポイントを押さえて、毎日の歯磨きで実践してみましょう。

正しく歯磨きするコツ

  • 鏡を見ながら歯磨きする
  • 歯を磨く順番を決める
  • 歯の表面を一本ずつ小刻みな動きでブラッシングする
  • ゴシゴシ磨かない
  • 過去に虫歯治療した歯はより丁寧に磨く
  • 歯と歯の間は歯ブラシが届かないので、歯間ブラシやデンタルフロスを活用する

歯ブラシのあて方

  • 歯と歯ぐきの境目に歯ブラシをあてるときは、歯ぐきに対して45度の角度で歯ブラシを優しくあてる
  • 歯の表側を磨くときは、歯に対して90度の角度で歯ブラシをあてる
  • 嚙み合わせ部分は、嚙み合わせの面に合わせて、毛先を水平にあてて磨く
  • 前歯の裏側は、歯ブラシを縦にあてて、縦方向に磨く

歯科医院でプロによるブラッシング指導の重要性

歯磨きが正しくできているのか、いないのかは自己判断ができません。歯科医院で受けるブラッシング指導によって、自分のブラッシングの状況がどうなのかがわかります。

プロによるブラッシング指導は、歯や歯ぐきの問題を予防するために重要な役割をはたします。

ブラッシング指導方法

磨き残しに色がつく染め出し液を使用して、どこに磨き残しがあるのかチェックします。これによって、磨き残し部分が鮮明になり、自分の歯磨きのクセがわかります。
それを元に正しいブラッシング(適切な歯ブラシの角度・動き・圧力など)方法を指導するので、効果的な歯磨きが自分でできるようになります。

当院では、口腔内の状態を確認し、患者さまの口腔内の状況に合わせた歯ブラシや歯磨き粉、歯間ブラシ、デンタルフロス、タフトブラシ、舌ブラシ、洗口剤などのさまざまなデンタルグッズのアドバイスや正確な使い方についても指導しています。

ブラッシング指導は予防歯科の一つ

予防歯科とは、虫歯や歯周病を未然に防ぐための取り組みをいいます。そのため、虫歯や歯周病の予防につながるブラッシング指導は、予防歯科の一つといえます。
予防歯科は、日常的に自分で行う歯磨き(セルフケア)と、定期的に歯科医院で行うクリーニング(プロフェッショナルケア)を両立して進めます。

予防歯科の定期的なクリーニングでは、ブラッシング指導も行います。ブラッシング指導だけではなく、予防歯科にも興味のある人は、是非ともご相談ください。

虫歯の主な原因4選

歯科医院でブラッシング指導を受ける3つのメリット

歯科医院でブラッシング指導を受けると、次のメリットを感じられるでしょう。

客観的に歯磨きの問題を把握できる

しっかり歯磨きしてブラッシング指導に臨まれた人は、染め出しをすると磨き残しの多さに驚かれることがあります。
自分でできていると思っていても、本当に磨けているのかどうかはわかりません。自分の歯磨きを客観的に見ることで、何が問題なのかを把握できます。

自分で適切な歯磨きができるようになる

歯磨き指導によって、正しい歯磨きが身につきます。
歯磨き指導を一度受けただけでは、すぐにできるわけではありませんが、歯磨き指導を定期的に繰り返すことで身につきます。また、自分の歯磨きに自信を持てるようになるでしょう。

モチベーションが高まる

忙しい毎日を送る中、学んだブラッシング方法が習慣化することも、正しい歯磨きの継続も難しいこともあると思います。
しかし、歯磨き指導を定期的に行うと、染め出しした面積が徐々に狭くなっていきます。これは自分のブラッシング技術向上の結果なので、歯磨きへのモチベーションへとつながります。

また、自分一人だけではなく、歯科医院と連携することが、継続の後押しになるでしょう。

歯のクリーニング

まとめ

大人の歯ブラシにはさまざまな種類があり、自分の口腔内の状況に合わせたものを使う必要があります。
口腔内の状態は自分では診断できないため、自分にピッタリ合う歯ブラシの選定は、歯科医院で相談することをおすすめします。

また、適切な歯磨きができていなくては、自分に合った歯ブラシを使用していても、汚れを落としきれません。
そのためには、歯科医院でブラッシング指導を受け、正しいブラッシング方法を身につけましょう。